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執筆者の写真yorimichibazar

【掲載情報】中村明珍 エッセイを寄稿しました。ミシマ社の雑誌 『ちゃぶ台11』

ミシマ社の雑誌 『ちゃぶ台11』 特集 自分の中にぼけを持て





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特集:自分の中にぼけを持て


世の中は、ピントを合わせる方向に進みすぎている、かも――。 生活にも、制度にも、仕事にも、あらゆることに、「ぼけ」が効いてくるのではないか?  ・村瀨孝生さん(「宅老所よりあい」代表) 随筆「僕の老い方研究」 ・山極壽一さん インタビュー「山極先生、ゴリラは『ぼけ』るんですか?」 ・若林理砂さん(鍼灸師)、上田誠さん(劇作家)、平野愛さん(写真家)   特別エッセイ「自分の中にぼけを持つための3箇条」 ・・・など、「ぼけ」の力に迫る読み物を多数収録。 *特集に寄せて  自分の中に毒を持て。  岡本太郎のこのことばには、ちいさな存在でも強くなれるのだから、という前提があっただろう。けれど、時は進み、時代は後退し、私たちのなかの毒はすっかり無毒化されてしまった。消毒剤の成分表には「正しさ」の表記。その割合はけっこう高い。もうひとつ高い成分が「くっきり、はっきり、すっきり」といった「透明性」。もし現代人が自分のなかに毒を持ってしまったら、毒への耐性、免疫が乏しく、毒に呑み込まれるのは必至。最悪のばあい、中毒死の危険すらある。  では、今、私たちが自分のなかに持つべきは何か?  こう考えたとき、「ぼけ」だと思い至るに時間はかからない。というのは、私自身が何よりそれを欲していたからだ。  実際、クリアカットな物言いをする人より、うーんと唸ったり、何を言っているかよくわからない人に惹かれてきた。白黒はっきりつけましょう、といった風潮にも馴染めない。その傾向は年々、強まるばかりだ。  昨年、『ぼけと利他』(2022年9月刊行)を読んだとき、編集者に大切な要素も「ぼけ」なのでは、とまで思った。きっと、私だけでないはずだ。最近でいえば、阪神タイガースの監督に就任した岡田彰布氏の発言が、いちいち話題になる。「いや、おーん、そらそうよ」。そのあまりの「わからなさ」にファンは歓喜する。  今私たちに欠けているものは、岡本太郎が生きていた(経済発展が地球環境より優先された)時代とは二つの点で異なる。  ひとつは、現代人のタフさは、毒では培われない。問題が起きたときの対処法が違う。毒で殺すのではなく、溶かす。そういう解消法が必要とされている気がする。  また、タフになるといっても、昔とちがって強くなるわけではない。それは、包容や寛容といった、質の違うタフさだろう。  だから、自分の中にぼけを持て、だ。  最近、老眼が進みつつあるが、私はこの原稿を裸眼で書いている。おかげで、文字はぼけている。そんな人間が企画した雑誌ですが、最後までおつきあいいただければ幸いです。 ――本誌編集長 三島邦弘 表紙写真:平野愛 *寄稿者 村瀨孝生 益田ミリ 斉藤倫 平野愛 津村記久子 土井善晴 上田誠 バッキー井上 伊藤亜紗 若林理砂 平澤一平 藤原辰史 齋藤陽道 榎本俊二 山極壽一 尾崎世界観 中村明珍 滝口悠生 内田健太郎 寄藤文平




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